行方知らずの夢のような

蟻か。すげえ。柏木温之、すげえや。

それなのに先生はそれを理解しようともしなかったばかりか、彼を叱った。(中略)これからの俺は、先生ではなく柏木温之のいうことを信じよう。柏木温之を大事にしよう。

                     ーー 『ふたつのしるし』宮下奈緒

 

美しく、強い物語だった。 

 

浅野健太の心情を目にしたとき、恐ろしいほどストンと何かが腑に落ちた。

日々の中で理不尽だと思ったり、こうありたいと思ったりすることを全て浅野健太が掬い取ってくれたようだった。

 

浅野健太を忘れないために、私はこの本を手元に置く。

 

 

この本のタイトルは『ふたりのしるし』ではなく『ふたつのしるし』であることに意味がある、と解説に書いてあった。

正直私にはこの2つの違いはよくわからないが、言いたいことはわかる。

それに、本の解釈は人それぞれ違うところがいい。

 

人によっては自分の考えを補完する解釈を好む人もいるけれど、私はその点に関しては逆である。

たくさんの解釈を頭の中で並べて、どれがしっくりくるだろう?と

少し俯瞰的な立ち位置で楽しむのが好きだ。

 

ネガティブな思考のある人はこれを「自分がない」と思うのだろう。

だが私はポジティブなので「何でも適応できる」と思う。

 

そもそもこの私で自分がなかったら一体誰が自分を持っているのか?

私の長所は「適応性がある」「裏表がない」、そして「人のいいところを見つける」だ。

なんていいやつ。友だちにしたい。

 

そしてまあ、もうすでにお判りだろうが、私の自重すべきところは「自信過剰なところ」だ。

 

 

仄暗い闇の中でどちらに進むべきかわからない人に

行く道を指し示すでも連れて行ってあげるでもなく、

ただひたすらに放射状に道を増やし、

あなたは選択肢がこんなにもあるんだと可能性を感じさせてあげたい。