慰める言葉などない
急に冷え込んだ。
残暑に頭を抱え、一度しまった夏用の布団を出し直したばかりだった。
改札から地上に上がる階段の匂いが変わった。
雨上がりの夜の匂いがした。
しばらく熱を入れて打ちこんでいたものが終わった。
自問自答を繰り返す日々に逆戻りした。
壁が薄い部屋の中で、声を出して泣いた。
「辛かった」という自分の声をはじめて聞いた。
服の色が派手という理由で陰口を言う人を見た。
青色のポスターをみて、綺麗な色だと思った。
駅前で頻繁に出会うバスの番号を覚えた。
終点が友だちの通っていた高校で少し残念だった。
「もっと夢を持ちなよ」と言われた。
「他人に期待しすぎですよ」と言った。